「食堂のアノ味をくれ!」 指でつまめるショウガ焼き。

ライター くりはらゆうじ

11月23日が「何の日」だかご存知ですか?

 

勤労感謝の日? NO NO NO!

 

11月23日は、「11(いい)23(つまみ)」のゴロ合わせで、「アテの日」なのです!
※正式には「珍味の日」として登録されています。

 

「アテの日」に立ち上げとなった『サケノアテ』編集部からは、「おいしいアテ」にまつわる情報を発信していきます。

 

さて、「豚のショウガ焼き」 って多くの人から根強い支持がありますよね。好きじゃない人を探すのが難しいくらいのメニューです。

 

しかし!
正直に申し上げるとボクには「豚のショウガ焼き」に対してそれほどの思い入れはありません。なぜならば、ボクは生粋の「魚派」だからです。

 

自分の意思で選ぶのは8割以上魚の店だし、家でも魚ばっかり食べてます。定食屋に入ったら「豚のショウガ焼き定食」よりも、断然「サバの塩焼き定食」派。

 

……って、これですよ、これ!

 

ボクが魚好きなのは個人的な酒肴、いや、趣向の話だとしても、「豚のショウガ焼き」と聞いて連想するのは、やっぱり「定食」ではありませんか?

 

「豚のショウガ焼き」はご飯のお供。酒のアテとしてのイメージはほとんどありません。

 

ところが、そのイメージを覆す一品がありました!

 

本日は、豚のショウガ焼きを魅力的な「アテ」に落とし込んだ「豚しょうが焼風ジャーキー」を紹介します。

 

魚派のボクもめちゃくちゃ好きになったので、工場まで取材してきたよー!

 

ショウガの風味がほとばしる!

 

伍魚福「豚しょうが焼風ジャーキー」。258円(税込)

伍魚福「豚しょうが焼風ジャーキー」。258円(税込)

 

「豚しょうが焼風ジャーキー」は、神戸に本社を置く珍味メーカー、株式会社伍魚福が販売しています。伍魚福が手掛ける珍味の数は、実に400種類以上!

 

……みなさん今「伍魚福」って読めましたか? ご、ごうお? ご、ごぎょ?
正解は「ごぎょふく」です。よく見るとロゴの上には読み仮名がふってありますね。この読み方はテストに出ますから覚えておいてください。

 

ボクは「豚しょうが焼風ジャーキー」以外にも、伍魚福が販売する「揚げ塩ぎんなん」の大ファンで、「揚げ塩ぎんなん」の工場にも取材へ行っちゃいました。その様子も順次公開予定なのでお楽しみに!

表面に付着した「ゴマ」がそそる。

表面に付着した「ゴマ」がそそる。

 

さて、この「豚しょうが焼風ジャーキー」ですが、開封した瞬間から香りがすごくいいんです! 強烈な「ショウガの香り」と「豚の脂の香り」がガツンと脳まで届きます。

 

目をつぶって耳をすましてみると……なんということでしょう! 「ショウガ焼きがフライパンでジュージュー焼かれる音」まで聞こえてきます。
というのは冗談ですが、ショウガ焼きを連想させる強い香りが食欲をビンビン刺激するのです。

指先にも伝わるしっとり感。

指先にも伝わるしっとり感。

 

そのまま、一切れいただくと……

 

「え? これ豚のショウガ焼きじゃん」

 

と、思わず言葉に出してしまうほどの再現性の高さにおどろきます。まさしくショウガ焼きですよ!

 

うまーい!!!

 

口に入れて、まず感じるのがビンビンに香りを放っていたショウガの風味。その後に、豚のうまみが広がるのですが、ジャーキー類にありがちな「パサパサで堅い食感」は一切ありません。やわらかく、噛みしめると肉汁を感じるくらいのしっとり加減です。

 

甘みのある、でも甘すぎない醤油ベースの味付けの加減も絶妙。口の中に残る「豚の脂」と「コショウの風味」で確実にお酒が進みます。ビールやハイボールとの相性はバツグン!

 

おもしろいアテですよ、これは!

 

というわけで、この「豚しょうが焼風ジャーキー」がどのように生まれたのか、販売する伍魚福さんに聞いてみます!

 

「オレが欲しいのはもっと馴染みのある味やねん!」

 

伍魚福の大橋さん。「豚しょうが焼風ジャーキー」の開発者。

伍魚福の大橋さん。「豚しょうが焼風ジャーキー」の開発者。

 

お話を伺うのは、伍魚福の商品開発本部で統括をつとめる大橋弘樹(おおはし・ひろき)さんです。大橋さんは「豚しょうが焼風ジャーキー」をはじめ、数々のヒット作の生みの親。

 

—— 大橋さん、本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、この「豚しょうが焼風ジャーキー」って、どのように考案されたのですか?

 

大橋 私たち伍魚福は、自社では工場を持たずに全国の協力工場と一緒に商品を開発しているんです。それで、ある協力工場から「ポークジャーキー」の提案があったんですよ。

 

—— 「ポークジャーキー」ですか。珍しいですね。

 

大橋 そのポークジャーキーは柔らかくておいしかったんです。でも、ビーフジャーキーならさておき、「ポークジャーキーが食べたくてたまらない!」って衝動に駆られることはありませんよね?

 

—— 確かにそうかもしれません……。

 

大橋 ボクはいつも「料理のイメージで味を提供したほうがお客様に伝わりやすい」と思っているんですね。豚肉を使った料理の定番といえば「ショウガ焼き」ですよね。

さらに当時、2012年頃なんですが、女性を中心にショウガがブームになっていました。だから、ポークジャーキーでショウガ焼きを再現できればおもしろいと考えたんです。

 

—— どんなショウガ焼きを目指して開発したんですか?

 

大橋 「マチの定食屋さんの、味が濃い目のショウガ焼き」ですね。開発には結構苦労もありましたね。

大橋さんが付けている社章。「珍味を極める♡」

大橋さんが付けている社章。「珍味を極める♡」

 

—— 試作はどのくらい行ったんですか?

 

大橋 20回以上だったと思います。

 

—— 20回以上もですか!?

 

大橋 新しいものを開発するのではなくて、はっきりとしたゴールがありましたから、納得するまで何度もやり直したんです。

ショウガ焼きって、決して高級な料理じゃありませんよね。だから、「ちゃうねん! もっと庶民的な味が欲しいねん!」ってダメ出ししたりもしましたね(笑)。

「荒々しい感じのショウガ焼き」が作りたかったんですよ。一般的に広く親しまれている味ですね。

 

—— そのショウガ焼きの味を再現するのに、どのような工夫をしたんですか?

 

大橋 食べた瞬間の「先味(さきあじ)」で、「うわ! ショウガ焼きだ!」って感動してもらえるように「いかにショウガの味をノセるか」という点にこだわりました。

ショウガが多すぎるとえぐみが出てしまいますし、少なければ存在感が出せません。この加減がポイントですね。

 

—— ショウガの風味がホントにいいですよね! 柔らかくてしっとりした食感もたまりません!

 

大橋 この柔らかさは、長時間にわたって調味液を浸透させることで生まれるんですよ。漬け込み時間が短いと肉が硬くなってしまうんですね。

 

—— パッケージにも「15時間漬け込んだ」って書いてありましたね。

 

大橋 そうなんです。でも、漬け込み時間が長すぎると、味が濃くなりすぎてしまいます。その加減にも苦労しましたね。

商品の説明はフセンのようなシール紙に。この紙はスペインからのお取り寄せ。

商品の説明はフセンのようなシール紙に。この紙はスペインからのお取り寄せ。

 

—— 口に残るコショウの風味もいいアクセントですよね。原料表示を見ると、白コショウを使っているようです。黒コショウではない理由があるのですか?

 

大橋 黒コショウは、白コショウに比べると香りが強い香辛料です。試作の段階で黒コショウも試しているのですが、「豚しょうが焼風ジャーキー」では、ショウガの香りをメインにしたかったので白コショウを選びました。

ゴマも後から付け足した隠し味ですね。コクを出すために入れています。

 

—— ジャーキーの「厚さ」にも意味があるんですか?

 

大橋 様々な厚みをテストしましたよ。硬すぎると噛んでいるうちに疲れてしまいますよね。でも、薄すぎれば物足りません。

最終的に10〜15回くらい噛むと飲み込める厚さをねらいました。この厚さだと、また次に手が伸びるんです。

 

—— ショウガ焼きの味を出すのにこれだけの苦労があったんですね。これはきっと工場の人たちも大変だったんだろうな……。

 

千切り? スライス? すりおろし?

 

工場はJR福山駅から車で20分ほど。

工場はJR福山駅から車で20分ほど。

 

というわけで、広島県は福山市まで行ってきました!
こちらの協力工場から、「豚しょうが焼風ジャーキー」の製造現場を紹介します。

生産部の柳井さん。芋焼酎派。

生産部の柳井さん。芋焼酎派。

 

工場内を案内してくださるのは、生産部の柳井康宏(やない・やすひろ)さんです。

 

—— 柳井さん、本日はよろしくお願いします!

 

柳井 よろしくお願いいたします。

冷蔵保管庫。高さ3mくらいの部屋全体が10度以下に保たれる冷蔵庫になっている。

冷蔵保管庫。高さ3メートルくらいの部屋全体が10度以下に保たれる冷蔵庫になっている。

 

柳井 まず、こちらが冷蔵保管庫です。購入した原料は冷凍保存しているのですが、もちろん冷凍のままでは加工ができません。この保管庫で明日使う分をゆっくり解凍していきます。

 

—— 壁に貼ってあるイラストがカワイイですね。

原料はイラストに沿って所定の場所に置かれる。

原料はイラストに沿って所定の場所に置かれる。

 

柳井 それでは、加工の現場へ移動します。原料を箱から出すと、大きな肉のブロックになっています。まったく味付けしていない状態ですね。

原料の肉のブロック。ひとつ当たりの重さは3〜4kgも!

原料の肉のブロック。ひとつ当たりの重さは3〜4キログラムも!

 

—— うわー! こんなにデカい肉のかたまりがゴロゴロしているところは初めて見ました!

 

柳井 このブロックをスライスしていくのですが、スライスする機械には特殊な技術を使っているので撮影はご遠慮ください(笑)。

 

—— その特殊な機械が、厚さの細かい調整を実現するわけですね!

スライスされた原料。このまましゃぶしゃぶしたら、絶対に一口では食べられない。

スライスされた原料。このまましゃぶしゃぶしたら、絶対に一口では食べられない。

 

柳井 スライスした後は、調味液に漬け込んで乾燥させていきます。詳しく紹介することはできないのですが、この工程も、他の工場ではほとんど行っていない製法だと思いますね。

 

—— 具体的に言えないのがもどかしいですが、手間を掛けた丁寧な作業をしているんですね。この場所は調味液のスパイシーな香りが充満していて、お腹が空いちゃいそうです。

乾燥を終えるとジャーキーとしてのたたずまいが備わっていた。

乾燥を終えるとジャーキーとしてのたたずまいが備わっていた。

 

柳井 乾燥が終わったジャーキーがこちらです。

最後に製品のサイズにカットして、袋詰をすれば完成ですね。カットする機械も特殊なものを使っています。

カットされたジャーキーが勢いよくベルトコンベアを走る。

カットされたジャーキーが勢いよくベルトコンベアを走る。

 

ストリーム・オブ・ジャーキー!

ストリーム・オブ・ジャーキー!

 

—— ボクらが知っているジャーキーの形ですね!

開発の苦労話を語る柳井さん。

開発の苦労話を語る柳井さん。

 

—— 開発についてのお話も聞かせてください。伍魚福の大橋さんから「20回以上の試行錯誤があった」と伺っています。どこで一番苦労したんですか?

 

柳井 調味液の味付けを決めるのが一番大変でしたね。ショウガの風味を活かしつつ、肉との相性をチェックしながら何度もやり直しました。

 

—— ショウガの風味が「豚しょうが焼風ジャーキー」の最大の特徴だと思いますが、どのような試行錯誤をしたのですか?

 

柳井 ショウガの量の加減ももちろんなのですが、「ショウガの使い方」も変えてみました。スライスしたり、千切りにしてみたりと試しています。

最終的には「千切りしたショウガ」と「すりつぶしたショウガ」をバランスよく採用しています。

 

—— 原料にはどのような豚肉を使用しているのでしょうか?

 

柳井 産地を厳選した豚のモモ肉を使用しています。モモ肉は脂が少ない赤身の部位で、ジャーキーに向いているんです。

 

—— ポークジャーキーって珍しいですよね。ビーフジャーキーに比べて、製造が難しかったりするんですか?

 

柳井 そうですね。豚肉には、調味液に長く漬け込むと「肉の赤身」と「脂身」がバラバラになってしまうという特性があります。ですから、漬け込んだ後の乾燥の段階で少し苦労がありました。

 

—— 最後に、生産者として「ここを味わって欲しい」というポイントを教えてください!

 

柳井 なんといっても、最初に感じる「ショウガのパンチ」と肉の相性を楽しんで欲しいですね。

食べた瞬間の「先味(さきあじ)」、噛んでいる最中の「中味(なかあじ)」、飲み込んだ後の「後味」と、いずれの段階にもショウガの風味は残しています。

その中でも、特に「先味」のファーストインパクトに驚いてもらえると思いますよ。

 

—— ありがとうございました!

 

 

今回ご紹介した「豚のしょうが焼風ジャーキー」は、全国の伍魚福商品取り扱いショップの他、伍魚福のオンラインショップでも購入が可能です。

 

みなさんはどんなお酒にアテたいですか?

 

伍魚福の大橋さんが薦めるのは、意外にも「酸味の強い白ワイン」。ワインの酸味とショウガのパンチの組み合わせを是非お楽しみください!

 

 

取材・文/くりはらゆうじ
写真/Naomi

くりはらゆうじ by
編集長。1988年生まれ。定食屋さんでも瓶ビールは外せない派。
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